自閉症児はことばの獲得が大変難しいことは、周知のとおりです。
私の子供も発語が遅れ、早期に自閉傾向と診断されました。
言葉の発達は困難、会話ができる可能性は低いと医師に告知され、それからは藁にもすがる想いであらゆる関係機関を走り回り、の経験は、皆さま親御様と同じでした。
しかしながら、私の場合は、舞台はアメリカ、カリフォーニアでした。各大学や研究所において、自閉症の研究が盛んでした。様々な方法を提唱するセラピー機関や幼児教育機関がありました。
幸いに、いろいろな相談機関を通して、大学や研究所において研修するチャンスには恵まれました。
そこでは驚きの連続でしたが、かくもアメリカでは障害児者に対する人権や教育を受ける権利が一個人として対等に保障されている、という社会状況に大きな感銘を受けたのです。
しかもノンバーバルコミュニケーション言語の獲得のためのセラピーや教育が早期に、2-3歳児頃から提供されていました。それは、発語の無い自閉症児に対する、文字での会話を可能とする手法でした。
実際に、話しことば(口語)を持たない自閉症児がセラピスト(教師)と会話をするのです。教師の話しかけに対して、その男児は、パソコンを一人で打ち、厳密にいえば、表出支援(または筆談支援、米英豪ではファシリテイティド・コミュニケーション・メソッドと云う)を受けながら、自分の思いを延々と綴っていきます。教師は後方から、その男児の肩や腕を時おりそっと触れているだけです。
これが表出支援なのです。どうして、そのような現象が起きているのか、信じがたい状況でしたが、説明を受けて半信半疑、納得。
それができるに至るまでの児童と教師の人間関係の道程はどれほどであったのでしょうか。
いかなる困難に遭遇すれども子供の能力の問題として片づけてしまわない強い意志があって、ことば・文字の意味の習得から始まる教育・訓練に係る膨大な時間とそして愛情と受容を根底としたとてつもない忍耐力を惜しまない決断が不可欠であること。
この直後から、私が私の息子に言語の獲得の実践を続け、結果を引き出した最重要課題でした。
本当に長い道のりを親子で頑張り続けました。
それを、我が子との意思疎通に悩んでいらっしゃる、特に自閉症児者をお持ちの親御様あるいは、教育者の方々に、是非、お伝えさせていただきたいのです。
本当に、子供に深い愛情を抱きつつ、子供の将来を憂い悲しんでいらっしゃる方、ぜひ試して下さい。